LOG IN

飛ぶには、たぶん、重すぎる [リライト版]

走れ、走れ。まだ早く走り続けろ。 感情を捨てろ、自意識を捨てろ。 削ぎ落せ、ぎりぎりまで、「俺」が消えて無くなるまで。 まだ速くなれる。まだ先へ行ける。 走り続けろ。 その先に行き着く場所が無限の虚無だとしても。 ぽっかりと暗闇に浮かぶ豪華客船は、頭上で逆さまになって傾いでいる。大きさは地球から見る満月くらい。まだかなり遠い。あの船の乗客

作品一覧

続き物の次の投稿はページ下部「OTHER SNAPS」のひとつ左になります。 g.o.a.tに掲載している作品一覧 「ゾンビつかいの弟子」(長編SF小説) 「怪獣をつかう者」(「ゾンビつかいの弟子」続編) 「宙(そら)が遣わす船に乗り」(長編SF小説) 「FAKE」(短編) 「たそがれのくにで」(短編)

宙(そら)が遣わす船に乗り 十七

エピローグ 終わりが近づく世界の空は、夕焼け空にも似て美しかった。 銀色の雲はところどころが透き通るような紫色に変わり、沸騰する液体のように絶え間なく蠢いている。ときどき、大きな泡が現われては、そこに稲妻に似た光が走り、薄氷を割るような音を奏でた。 私は海岸の道を逸れ、階段状に固められたコンクリートの岸壁を、砂浜に向かって降りていく。

宙(そら)が遣わす船に乗り 十六

8.「あなたは本当に、暗示に掛かりにくい人みたいですね」聞き覚えのある甲高い声が言った。 私の視界は銀色の、鈍く光る霧のようなものに覆われ、目を開けているはずなのに何も見えなかった。「かなり強力な誘導をしているはずなんですがねえ。まあ、たまにいらっしゃるタイプです。自我の芯が強いのでしょう。他人の言葉に簡単に身をゆだねず、惑わされな

宙(そら)が遣わす船に乗り 十五

7.「つまり、あなたにとっては、ということですが。あなたが間違った時間軸に留まるなら、その時間軸に沿った方向にある未来を選択したのと同じことになります。あるべき正当な時間軸から枝分かれして逸れてしまったほつれ糸です」「歴史が分岐したパラレルワールドに行くってこと?」「あなたの視点からはだいたいそのように見えるでしょう。ほつれた糸は